新宿からJRで約15分、都内でも食通が集まる場所として知られている「西荻窪」エリア。個性的な飲食店がしのぎを削る中、独自に研究を重ねた熟成鮨で差別化をはかり人気を集めているのが『鮨 まるふく』。地元だけでなく、都心や地方からもわざわざ来店するファンもいる、知る人ぞ知る鮨店だ。
大将の伊佐山 豊氏は、実家が東京・東長崎で50年続いた老舗の鮨店で、幼いころから鮨に触れ合う環境で育った。自身も都内の鮨店で25年の修業を積み、2011年10月、実家の屋号を引き継ぎ、東京・西荻窪に『鮨 まるふく』をオープン。独立する際に思い描いた、「魚をただ握るだけではなく、しっかり手を加えた鮨」を提供し、独自の魅力を打ち出している。
鮨ダネに使う魚介類は、白身は五島列島で有名な魚屋から放血神経締めされたものを仕入れる。そのほか、時期によって北海道の漁師から希少なウニを直送してもらい、マグロは「やま幸」を使用する。仕込みは、魚の大きさや脂ののり具合で、酢や塩のしめ方や熟成期間を変えているのが特徴。例えばコハダなどの光り物は、一般的にはしめてから2〜3日で握ることが多いが、『鮨 まるふく』では、最低でも5日以上、時間をかけてゆっくりとしめることで、酢や塩の角を取とり旨味成分だけを残している。また、白身はすべて熟成しており、クエなどは20日以上、魚によっては最大で1ヵ月半ほど寝かせることもあるという。酢飯は秋田産と新潟産の2種類の米を合わせ、赤酢をベースに4種類をブレンドしている。
メニューは「おまかせ」一本で、初めに熟成した白身を、そのあとは光り物、後半では味の濃いものや甲殻類など、つまみと鮨を交互に提供。そして、その流れにそって、唎酒師の資格を持つ女将が相性の良い日本酒を提案してくれるのも『鮨 まるふく』の楽しみの一つ。日本酒は常時25種類ほど用意して味幅を持たせており、おすすめは広島の「宝劔(ホウケン)」。大将が好きな日本酒でもあり、食中で飲みやすいのが特徴だという。
店内は京都産のヒノキを使用した10名掛けのカウンター席のみ。つけ場の壁には富山の組子細工を取り入れ、天井は少し低めにすることで、落ち着きのある空間に仕上げている。良店がひしめき合う東京に、遠出してでも行きたい鮨店がまた一つ増えた。
■アクセス
JR「西荻窪」駅より、徒歩3〜5分