「周囲に海のない長野県で、極上の江戸前鮨に出合える」と、東京の料理人や食通がわざわざ足を運ぶ名店『すし崇』。2008年10月の開業以来、こだわりの熟成鮨を求めて訪れるゲストが後を絶たず、全体の約8割が県外からの来店で占めている。
店主は、長野で生まれ育ち、東京で10年研鑽を積んだ久保崇嘉(クボ タカヨシ)氏。「仕込みに手間を惜しまないのが信条」という久保氏の鮨は、2週間から1ヵ月ほど寝かせる熟成魚をはじめ、1日がかりで煮るかんぴょうや、すり身に芝海老やホタテが入った玉子焼きなど、とにかくすべての品に妥協がない。
久保氏は、それぞれの素材の持ち味を引き出すことを「素材に合わせた手当てをする」と表現し、締める、煮る、焼くといった江戸前鮨の伝統的な“手当て”を施すことで、最上の鮨が出来上がる。魚介は、北海道から九州まで全国20ヵ所ほどの産地から直接仕入れており、中には築地に到着するのと変わらぬタイミングで入手できる魚介類も。例えば春は、宮城のヒラメや超希少と言われるブドウエビ、愛媛・今治の赤貝、和歌山の黒ムツなどだ。
それらの最高の素材を、ベストな温度管理ができる氷冷庫でじっくりと熟成をさせて提供することで、「生産者の想いも伝えていきたい」と久保氏。もちろん酢飯にもとことんこだわり、米は長野の農家から直接買い付け、籾殻がついた状態で冷蔵貯蔵されているものを必要に応じてそのつど脱穀してもらう、いわば「生きた状態」とも言えるものを使用。そこに京都の赤酢を合わせ、熟成させたタネに合う味わいに仕立て上げる。鮨に合う日本酒も季節ごとに20~30種と豊富に揃えており、ゲストの好みに合わせて勧めてくれる。
美しい檜の一枚板のカウンターが彩る店内は、カウンター10席と、テーブル6~10人席、座敷10人席。女将である奥様のもてなしも心地よく、遠出してでも訪れたい名店だ。
■アクセス
長野電鉄「権堂」駅より、徒歩10分
長野新幹線「長野」駅より、徒歩20分
長野新幹線「長野」駅より、タクシーで7分