人形町の老舗鮨店『六兵衛』で20年以上にわたって腕を磨いた一條 聡(イチジョウ サトシ)氏が、2015年11月、満を持して『鮨 一條』をオープン。独立開業の地に選んだのは、かつて『都寿司』があった場所(現在は『日本橋蛎殻町 すぎた』となって移転)。一條氏にとっては、小学生の頃から『都寿司 本店』へ家族でよく通っており、その頃から職人の姿に憧れを抱き鮨職人を志したという由縁の深い場所でもある。「派手さはなくても、当たり前のことをしっかりとやり続けることを大切にしています」と一條氏。いい魚を仕入れ、お店を清潔にし、真摯に鮨と向かい合う。伝統を守り続けながら正統派の、江戸前鮨を提供している。
魚介は、日本近海の天然物にこだわり、旬の素材を厳選。酢〆にしたコハダや、ふっくらと柔らかい煮ハマグリ、タレと塩で食すアナゴなど、伝統的な仕事を施した魚介類が、赤酢を使い酸味を大切にした酢飯と見事に調和する。「食べ終えてからもまた行きたいと思えるような、記憶に残る鮨屋を目指しています」という一條氏の言葉通り、一つひとつに魂をこめた真剣勝負の握りが堪能できる。お酒も、鮨の邪魔をしないものを選び抜き、季節ごとのおすすめも用意している。また、味づくりだけでなく、店づくりの随所にも、本物志向のこだわりが光る。情緒ある店名の『鮨 一條』という文字は、書道家の稲村雲洞氏の手によるもの。
また、一條氏は器への造詣があり、人間国宝の藤本能道氏や三浦小平二氏の作品をはじめ、三上亮氏などの現代作家の作品まで、自らが見立てたこだわりの器を使用している。カウンター10席のみの店内で、心ゆくまで江戸前鮨の真髄を体験していただきたい。
※世界的グルメガイド東京 2023年度版にて一つ星を獲得
■アクセス
都営新宿線「馬喰横山」駅A3出口より徒歩3分
都営浅草線「東日本橋」駅B2出口より徒歩3分