東京・墨田区東向島、四季折々の草花が楽しめる向島百花園の傍らにある江戸前鮨店『うを徳』。1964年、アジア初となる東京オリンピックが開催された年に開業。二代目を務める店主・小宮 健一(こみや けんいち)氏は、大学を卒業後、京都の日本料理店『割烹 やました』で2年修業。1992年に『うを徳』に入店した。
コンセプトは「京料理と江戸前鮨の鮨懐石」。京料理にはじまり江戸前鮨で終わる、東西の都の伝統的な食文化が一度に味わえる構成。食材は京野菜をベースとしながらも、秋には広島、信州、四国などから市場を通さず上質な松茸を直接仕入れるなど、築地をはじめ全国各地からその時期に最も良いものを仕入れることにこだわっている。元々は小宮氏の祖父が鮮魚店として創業したこともあり、特に質の良い魚介類が揃う。
『うを徳』で特に力を入れるのが、ウナギとお吸い物。ウナギは天然物を蒸さずに炭火で焼き上げる関西風のスタイル。ごはんを入れて蒲焼きにしたり小さなどんぶりにしたり、一般的なウナギ専門店では見られないアレンジが楽しめる。お吸い物は小宮氏が最も大切にしているという料理のひとつ。9時間かけて一番だしをとり、上品で深みのある素材本来の味わいを引き立てている。料理の最後を飾る鮨は、新鮮な魚介類と、赤酢のみで仕上げた酢飯で握られる。小宮氏の技術の賜物である鮨に寄り添うのは、常時10種類ほど揃う日本酒。中でも、広島「賀茂鶴」は、鮨に合う日本酒として東京都内の老舗鮨店でも扱われることが多く、先代である小宮氏の父が好んでいた酒の一つでもある。
主にヒノキを使用して造られた店内は、掘りごたつ式のカウンター6席とテーブル4席のみ。どちらも靴を脱いで上がるスタイルで、リラックスして食空間に浸ることができるだろう。家族や友人との大切な一席に、向島百花園散策とあわせて四季を感じられる鮨の世界を堪能していただきたい。
■アクセス
東武伊勢崎線 東向島 徒歩4~5分
京成押上線 京成曳舟 徒歩15~20分