大阪・堺駅から徒歩10分、堺随一の老舗として知られる鮨の名店『弥助(やすけ)』。その向かいにある、落ち着いた装いの一軒家が、『鮨おおが』である。店主・大賀伸一郎(おおが しんいちろう)氏は『弥助』の四代目。『弥助』にて3年、日本料理店で10年腕を磨いたのち、自らの鮨を表現しようと、2018年6月に『鮨おおが』として独立を果たした。
『弥助』では2種類の酢飯を使い分けるが、大賀氏はすべてを一から見直し再構成。赤酢3種類をブレンドした、きりりとした酢飯一本で勝負に出た。伝統の中で育まれながらさらなる美味を追求するのは、大賀氏の職人としての気概の現れ。また、大賀氏が最も重きを置く鮨ダネが、関西では珍しい「マグロ」である。名立たる江戸前鮨の名店を顧客に抱える、豊洲(旧:築地)のマグロ専門仲卸「やま幸」から、選りすぐりの上物をわざわざ取り寄せている。特によいものが揃った時には、コース中に部位を変えてマグロを7貫ほども組み込むことも。関西といえば外せない白身魚にももちろんこだわり、大阪の豊南市場や淡路から直送で仕入れ、丁寧に仕事を施し素材の味を引き出す。さらに日本料理の経験を活かし、淡路産の白身にナマコの卵巣の塩漬けを巻いて提供するなど、一ひねりした独創的なつまみも楽しい。魯山人などアンティークな器も随所に登場し、視覚的にもゲストをもてなす。日本酒は旬のものと合わせて常時10種類ほどを取り揃えており、鮨と肴を引き立てる辛口系、純米系を中心にセレクトする。
落ち着いた雰囲気の店内には、檜の一枚板のカウンター。客席は最大で8席のみで、じっくり大将の仕事を堪能できる。『弥助』からの常連客はもちろん、『鮨おおが』の新たなる魅力に惹かれたゲストも多い。「お鮨を楽しんでいただけるならどなたでも」と、真摯な大賀氏の進化していく鮨を、じっくり味わいつづけたくなる良店だ。
■アクセス
南海本線 堺 徒歩15分