小田急小田原線「経堂」駅南口を出て、商店街を3分ほど進むと、一つ星の『鮨処 喜楽(きらく)』の落ち着いた店構えが見えてくる。1937年創業で、2004年5月にリニューアルオープンした老舗鮨店の三代目店主を務める太田 龍人(おおた たつひと)氏は、20代の頃から『喜楽』で修業を積み、先代から弟子へ連綿と受け継がれてきた伝統の技術と味を守り続けている。
「慣れ親しんだ地元の街で、本格的な江戸前鮨をリーズナブルな価格で提供する」をモットーに握られる鮨には妥協がない。魚介類は、太田氏自らが豊洲(旧:築地)市場に足を運び、有名な日本料理店や鮨店も仕入れている鮮魚店で、ひとつひとつ自身の目で見て厳選。長い年月をかけて信頼を築き上げてきた『喜楽』だからこそ仕入れられる素材ばかりだ。魚介類そのものの味わいを引き立たせる酢飯は、豊かなうま味が特徴的な赤酢を2割使用。鮨全体を引き締めるワサビも、鮨に合う香りと粘りを持つものを信頼の農家から直接仕入れている。これらの素材で握る鮨は、歴史をつないで現代に息づく『鮨処 喜楽(きらく)』ならではの力強さがある。
扱う日本酒は、経堂にある東京農業大学の醸造学科OBの手によるもの。地元を愛する『喜楽』ならではのこだわりである。また、愛媛『石鎚(いしづち)』や京都伏見『蒼空(そうくう)』をはじめ、常備している10種類ほどの日本酒もすべて、太田氏が実際に会った酒蔵から仕入れている。
シックでモダンな和の雰囲気が漂う店内は、カウンター9席のみ。常連のデザイナー近藤 康夫(こんどう やすお)氏が、リニューアル時にデザインを担当。ぬくもりのある落ち着いた空間で、何度でも足を運びたくなる安心感さえある。鮨と一緒に、太田氏との会話を楽しめるよい距離感もまた、行きつけの鮨店にしたくなる魅力の一つかもしれない。英語対応も可能なので、海外ゲストのおもてなしにもオススメである。
※世界的グルメガイド東京 2023年度版にて一つ星を獲得
■アクセス
小田急小田原線 経堂 南口徒歩30秒から1分 駅前