大阪・千里山駅西口から車で5分、関大駅前駅から徒歩8分ほど、住宅街にとけこむたたずまいの『柏屋 大阪千里山(かしわや おおさかせんりやま)』。外観の数寄屋造りの美しさと、堂々とした扁額に目を奪われる。立派な門構えの一軒家に一歩入ると、穏やかな非日常感に包まれる。
店主は松尾 英明(まつお ひであき)氏。もともと『柏屋』は、松尾氏の先代である父が40年ほど前に開業。松尾氏は大学で理論物理学を学んだ異色の経歴があり、学生時代に茶道に出会い、日本の伝統文化の豊かさにひかれて料理を志した。卒業後は滋賀の老舗料亭「招福楼」で修業。ここで、お客様一人ひとりに合わせて料理を考え、部屋のしつらえや道具などを駆使する細やかなもてなしの心を学ぶ。
料理は四季折々に、開業以来作り続けられてきた名物料理が楽しめる。たとえば「甘鯛の海老塩焼き」は、焼く前に海老塩で味をつけた海老の香りが楽しい冬の名物。また、昆布と塩のみで調味された「伊勢海老の柔らか蒸し」は伊勢海老の身を丸ごと長時間蒸し揚げて煮物椀に仕立てる。季節を感じられる月替わりのメニューは、常連のお客様にも好評だ。ドリンクは焼酎からワインまで種類豊富。ソムリエの松岡正浩氏はフランス料理店で長く働いた経験があり、日本酒やワインを組み込んだペアリングで、料理とのマリアージュを楽しませてくれる。
店の設計は、数寄屋建築の名匠・中村利則氏によるもの。茶室を含む趣の異なる全7室(2~30名)で、すべて個室。それぞれが京都の著名な染色家・吉岡幸雄氏の染めた和紙で設えられている。海外ゲストのためには英語メニューがあり、英語対応も可能。座敷、茶室、苔と木々を配した庭の眺め。玄関を入ってから帰るまで、四季折々の仕掛けが心を弾ませてくれる。『柏屋』で、日本のもてなしの真髄に触れるまたとないひとときを、ぜひ味わっていただきたい。
※世界的グルメガイド京都・大阪 2024年度版にて三つ星を獲得
■アクセス
阪急千里線 関大前駅 徒歩8分