江戸川橋駅より徒歩6分の閑静な街に店を構える『石ばし』。3代目と4代目が焼き場に立ち、女将がこだわりの米でご飯を炊き、若女将が酒のセレクトとサービスをする、昔ながらの家族経営を受け継ぐ一つ星のうなぎ店だ。
明治の終わり頃の1910年、初代・根本 良(ねもと りょう)氏により創業。中之橋のたもとにあった店を、戦後、今の場所に移した。現在は4代目の根本 和典(ねもとかずのり)氏が社長として店を守る。師匠は父親の3代目・根本 光昭(みつあき)氏。20歳の頃から光昭氏のもとで修業を重ね、今では4代目として、3代目と肩を並べて『石ばし』自慢のうなぎの味を守る。
うなぎは日々状態が変わるもの。静岡産であったり、九州産であったり、その日の状態を熟知する問屋の目利きに信頼を置き、その日一番よい状態のうなぎを仕入れる。そして「うなぎ店の命」と言われるタレは、創業時から受け継がれており、また漬物も自慢の一品。『石ばし』秘伝の糠床(ぬかどこ)はタレよりも歴史が古く、100年以上のもの。その糠床で漬けた漬物をすべて味わうことのできる「百年床漬物盛合せ」も人気メニューだ。
「うなぎをお出しするまでの時間は、つまみとお酒をゆっくり楽しんでいただきたい」と話すのは若女将の根本 亞由子(ねもと あゆこ)氏。焼き上がりまでに要する1時間弱は、日本酒の“唎酒(ききざけ)師”でもある亞由子氏の出番。一品料理やコースの料理に合わせる日本酒を、お客様からのリクエストでセレクト。季節の日本酒を常時20〜30種そろえ、2週間に一度は入れ替える。蔵元との付き合いも幅広く、一度しか出合うことができないレアな日本酒も多いので、日本酒通からも一目置かれるラインナップだ。お茶にもこだわり、初代から付き合いのある神楽坂銘茶『楽山(らくざん)』のお茶が提供される。
玄関先には空襲にも耐えた煉瓦塀が立つ、趣のある店構え。輪島塗の「お重箱」は大切に使われ、中には初代から受け継がれたものもある。時にはその歴史あるお重箱で提供されることもあり、うなぎ料理という食と器の工芸で、日本の伝統文化の共演を楽しむことができる。店内は、座敷3部屋、テーブル3卓で、およそ40席を用意。平日には接待などのビジネスシーンで、週末は家族や友人、デートなどのプライベートで、『石ばし』の空間と伝統の味を満喫していただきたい。英語メニューも用意可能なので、海外ゲストのおもてなしの場としても活用されてはいかがだろうか。
※世界的グルメガイド東京 2023年度版にて一つ星を獲得
■アクセス
東京メトロ有楽町線 江戸川橋駅 4番出口 徒歩6分