六本木駅から徒歩5分。にぎやかな交差点から一本入った西麻布のビル3Fに『霞庭(かすみてい)まつばら』はある。静寂に包まれた隠れ家的な店で、大将の松原 博秋(まつばら ひろあき)氏が腕を振るう。
銀座『割烹 未能一(みのいち)』、金沢の老舗料亭『金城楼(きんじょうろう)』などで修業し、日本料理の基本を習得した松原氏。1999年から『麻布 京善』に入り、店長と料理長を兼任。11年間研鑽を積み独立し、2010年に『霞庭まつばら』を開店した。店名にある霞庭は、西麻布の旧地名・霞町に由来する。
“創作”と呼ばれる日本料理が多い中、松原氏は昔ながらの調理法を守り、新しさにも目を向け取り入れていく。魚介の仕入れは豊洲市場の信頼できる仲卸から。悪天候で漁の変更などある場合は昼夜を問わず連絡が入るため電話は肌身離さず持つ。「農家や漁師といった生産者から預かる命。作り手の方々の思いをのせて最高の状態でお客様の目の前に出さなくてはいけない」という気持ちから、たとえ真夜中でも電話対応する。
料理を見て味わうだけではなく、香りも交えて五感で楽しめるように、調理は臨場感あふれるオープンキッチン。魚介や肉を炙って余分な脂を落とす炭火焼を得意とする。調理器具の素材にもこだわり、焼き台や蒸し器は、信楽雲井焼の作家・中川 一辺陶(なかがわ いっぺんとう)氏によるもの。「カウンター越しにうかがえるお客様のこぼれる笑顔が嬉しい」と松原氏は目を細める。
日本酒は、修業先で出合った石川の「手取川」をはじめ、福井「黒龍」、佐賀「鍋島」ほか、入手困難な季節のものを中心に10種ほど揃える。ワインにも力を入れ、「ケンゾーエステート」や、日本にもこんな良いワインがあることを知ってもらいたいと山梨「ミサワワイナリー」のシャルドネも薦める。
店内に一歩足を踏み入れると、女流書家の閑 万希子(かん まきこ)氏による店名の書が迎えてくれる。カウンター7席。2〜8名まで可能な個室も用意されているので、家族や友人、仕事仲間との会食やデートから接待といったビジネスシーンまでさまざまなシチュエーションで利用され、しばし時間を忘れて『霞庭まつばら』の日本料理を楽しんでいただきたい。
■アクセス
東京メトロ日比谷線 六本木駅,都営大江戸線 六本木駅 2番出口 徒歩5分(EXシアター越えた一本目道右折した左側の建物3階)