外苑前駅から程近い南青山のビル2階にある『慈華(いつか)』。店名に“食材、生産者、料理を慈しむ”という想いを込め、シェフの田村 亮介(たむら りょうすけ)氏が日本の地でしか表現できない中国料理を提供する。
“中国料理の田村氏”と聞いて、ピンとくる食通の方も多いだろう。四川料理の名店『麻布長江 香福筵』で腕を振るい、人気を博したシェフの田村氏だ。中国料理店を営んでいた父の影響で料理の道に進み、横浜中華街『翠香園』などの中国料理店を経て、四川料理『麻布長江』の長坂 松夫氏のもと、研鑽を積む。2006年『麻布長江香 福筵』の料理長に就任し、2009年には同店のオーナーシェフとなる。2019年4月、建物老朽化のため閉店した後、2019年12月に『慈華』をオープンした。
田村氏は「日本人の自分が南青山で作る中国料理。この時代、この場所、この日本の地でしか表現できない中国料理」と自身の料理をそう表現する。食材の仕入れにも神経を尖らせ、日本の海の資源の減少を危惧する。それゆえに、未来に魚介を残すために資源管理を徹底する長崎・五島列島、神奈川周辺、北海道・函館、和歌山といった思いを同じくする生産者と取引。思い入れのある生産者から預かるその食材の良さを最大限に生かすため、火入れには細心の注意を払う。
「運気の上がる前菜盛り合わせ」は、『慈華』のシグネチャーディッシュ。季節感ある7〜8品の料理が縦に並べられ、それらを下から上に味わっていく。気分を高めるプロローグ的なメニューだ。信頼する五島列島の生産者から送られる魚介を使う「五島のクエ(またはスジアラ)ウロコ仕立て」は、絶妙な火入れでゼラチン質のうま味あふれる身にカリカリのウロコを纏わせ、四川の伝統的なソース・椒麻(ジャオマー)で食す逸品。「京都 七谷鴨の火鍋仕立て」は、20種のスパイスからなる醤(ジャン)ベースのダイナミックな料理で人気を集める。ドリンクは、ワイン、紹興酒、日本酒も組み込むペアリングがおすすめだ。
インテリアは日本をイメーシする“木”と中国の“石”で構成され、化学的なもの一切使用しない料理のコンセプトと同様にナチュラルで落ち着いた雰囲気が漂う店内。テーブル席と円卓のある個室を用意している。 上質な料理とサービス、空間でもてなされる中国料理店『慈華』は、家族や友人、同僚やカップルなどと、どのようなシチュエーションで利用されても特別な時間を心地よく彩られることは間違いない。
※世界的グルメガイド東京 2023年度版にて一つ星を獲得
■アクセス
都営大江戸線 青山一丁目 3出口より徒歩7分
東京メトロ銀座線 外苑前 4a出口より徒歩3分