新宿よりJR特急で2時間。長野県・茅野駅近くに店を構えるのが『無名(むみょう)』。大将の唐木 正文(からき まさふみ)氏が長野の魅力を引き出し、丹精込めて作る料理を求めて県内外から食通たちが足を運ぶ。
唐木氏は目白にあった料亭で研鑽を積み、2008年現在の場所に『和食から木』をオープン。 さらに2021年には、“和食”というジャンルにとらわれず、“長野”を表す料理を追求するべくに店名を『無名』に改名。「物の始まりは全てが無名。名のある物に囚われず、名のなき物に光を当てる」という思いを込め、名が轟く食材に頼ることなく、長野の風土を感じる名もなき物を一皿の上に表現する。
氏は、早朝に名水「黒耀の水」を汲みに走り、時に自生する山菜やキノコを摘み、時間が許せば地元の生産者のもとへと足繁く通う。ご馳走=“お客様のために走り回って調達した食材で料理を振る舞う“を言葉通りに体現。「水・季・風・土」をテーマに目指すのは、やみくもに手数をかけ過ぎず、自然体で、口にすれば里山の風景が思い浮かぶ料理。信頼をおく猟師や生産者から届く食材を使った料理と同様に、『無名』の魅力を表現するのがコースの最後に提供される「白いご飯」。長野県産のよりすぐりの米を毎朝自家精米し、土鍋で炊く。先ずはそのままを味わった後は、安曇野の山葵、八ヶ岳の山麓で作られる卵や生ハムを添えたりと食し方を変え、さらに楽しむことができる。
ドリンクはワイン好きの唐木氏がセレクトする長野ワインを中心とした日本ワインを始め、フランス、オーストリア等のワイン200種あまりをストック。日本酒も県内の蔵元を中心に厳選した物を揃える。ここでは是非『無名』の料理に寄り添うおまかせでのオーダーをおすすめしたい。近隣で作られる無農薬のバラを蒸留して作ったノンアルコールジンを使ったジントニック、無農薬の茶葉を使った中国茶等を揃え、ノンアルコールドリンクのメニューもナチュラルなものにこだわる。
料亭を改装した純和風の一軒家料理店。趣のある店内はカウンター6席で、骨董や、唐木氏と交流のある作家による器の数々が料理を彩る。店名は『無名』とは言え、食通たちには周知される人気店。家族や友人、カップルなど食の楽しみを共有できる仲間と一緒に訪れ、唐木氏がお皿に写し込む長野の風土を堪能していただきたい。
■アクセス
JR茅野駅東口より徒歩2分