日本有数の米所としても知られる新潟県。JR新潟駅からタクシーで約10分の歓楽街に店を構えるのが『鮨 はたけやま』。鮨職人である父のDNAを受け継ぐ店主の畠山 正義(はたけやま まさよし)氏が、新潟の魅力を鮨ダネに込める“新潟前”鮨を届ける。岩手県出身の畠山氏は、北海道札幌の老舗名店『すし善』で修行を積み、その後上京。幾つかの鮨店で研鑽を積み、2017年に女将の故郷である新潟に居を移し、『鮨 はたけやま』をオープンした。弟の義春氏は新橋『割烹 山路』を営んでおり、料理人のDNAは脈々と受け継いでいる。
メニューはおまかせコースのみで、料理が数品と握りで構成される。 酢飯の米は新潟・佐渡の新米コシヒカリを使用。粘り気が強く一粒がしっかりとしているため、酢飯として美味しく炊き上げるには季節ごと水分調整が重要である。酢飯には貴重な無添加自然発酵の赤酢を使用しており、丁寧に調味することで香り豊かな『鮨はたけやま』ならではの酢飯が出来上がる。赤酢の酢飯は刺激が強く苦手という方も、このまろやかな味わいと芳醇な酢飯を愉しんでいただきたい。
新潟という土地柄、特大南蛮エビ、ズワイガニ、毛ガニ、アワビといった地元食材をふんだんに使い、握りは“新潟前”を目指す。酢飯は小さめだがネタは身厚でボリュームがあるのが特徴。選りすぐりの魚介類の持つ旨味と力強さを味わって欲しいという畠山氏の願いが込められている。特に新潟でも希少な特大南蛮エビの握りは圧巻の4本のせとなっており、口いっぱいに頬張れば、極上の南蛮エビだけが持つ甘みやねっとり感を余すことなく堪能できるだろう。新潟では獲れないウニは貴重な北海道の無添加ウニを仕入れており、地元食材以外のネタも厳選し仕入れている。
また、多種多様な薬味やペーストが握りに使われていることも特徴。アワビやあん肝のペースト、熟成玉ネギ、柚子胡椒、黒七味唐辛子、和辛子、紅葉おろし、木の芽、白胡麻ペーストなど挙げればキリのない豊富な組み合わせから、逸品が生み出される。丁寧な仕込みから始まり、計算された隠し包丁、薬味の選定に至るまで握り一貫にかける工程は繊細かつ緻密。完成した握りは一貫の握りに留まらず一つの一品料理とも言える。
コースの〆のお稲荷さんは、干瓢巻きを優しく上品な味わいのだしで炊いた油揚げで巻いたスペシャリテ。また、店主の修業先である『すし善』発祥の「トロたく巻」も名物のひとつで、コースの後に余裕があれば味わって欲しい逸品である。日本酒は「金鶴」「鄙願(ひがん)」「あべ」など貴重な地酒が揃っており、豊富なラインナップが楽しいひと時に彩りを添える。
店内は、凛とした雰囲気ながら、畠山氏の笑顔で和やかな空気を醸し出す店内は、カウンター(6〜7名)とテーブル席(4名)を用意。
奇しくもグルメ雑誌などにおいては未だノンタイトルの『鮨 はたけやま』ではあるが「美味しい」だけにとどまらず、その先にある発見や驚きが随所に散りばめられた五感を刺激する鮨をぜひ味わっていただきたい。
■アクセス
新潟駅万代口からタクシーで10分