東京メトロ明治神宮前駅から徒歩7分。ブティックとモダンなマンションが建つ細い路地の奥に、看板のない2階建の古民家がある。築70年を越える濃い焦げ茶色をした木造建築。その古めかしい落ち着いた外観から一歩内部に入ったモダンな内装には、訪れただれもが意表を突かれるにちがいない。『表参道 RESTAURANT HYENE(イェン)』は、そんな蓄積された時間と清新な感覚のあいだにある。
シェフ木本 陽子(きもと ようこ)氏は1991年生まれ。六本木の『ラトリエ ドゥ ジョエルロブション』に勤務ののち、自身のルーツのひとつである韓国へ渡り、伝統的な韓国宮廷料理で定評のある『ハンミリ』でさらに自身の料理世界を模索した。木本氏が『ハンミリ』で学んだことは、唐辛子やニンニクを使わない韓国宮廷料理には、日本の懐石料理と牛テールなど肉類でだしをとる点にフランス料理との共通点があることだった。その経験を昇華した料理のひとつが、「二年熟成メークインのフォンダンショコラ仕立て」。韓国でポピュラーな餅菓子「ペクソルギ」をベースに、熟成されたじゃがいもの甘さをフランス料理にできないかと試作を重ねて生まれたスペシャリテだ。韓国・日本・フランスという3ヶ国のエッセンスを縦横に用いて、革新的なフランス料理を提供している。
ドリンクに日本酒を多く揃えているのも特徴だ。アルコールペアリングを設定、ワインよりは日本酒のおいしさを料理に合わせる試みを行っている。ノンアルコールドリンクは、季節のフルーツと茶葉で作るオリジナルドリンクなど自家製のものを豊富に提供する。
外観は古民家の趣をそのまま生かし、内装は焦げ茶色をベースにしたモダンな仕上げ。内装デザインは木本氏の親族が行ったもので、国内最大級のカフェ・ベーカリー・レストラン総合展「CAFERES JAPAN(カフェレスジャパン)2022」においてデザインアワードを受賞した。カウンター8席、2階に6名入れる個室が1室、カウンター席は調理台と同じ高さに設定されていて料理を仕上げる様子を間近に見ることができる。シェフやスタッフとの距離が近く、料理の感想をすぐに伝えられるのも魅力だ。
店名の『HYENE(イェン)』はハイエナのこと。ハイエナは群れの中での協調性が高い動物だ。選り好みをせず獲物を食べつくす習性にも、憧れとして木本氏は自らの理想を重ねる。そして、ゲストにはここで料理を楽しみつくしてほしいという思いもこめられている。『表参道 RESTAURANT HYENE』で、心おどるひと時を楽しんでみてはいかがだろうか。
■アクセス
千代田線明治神宮前駅4番出口より6分