新潟市の奥座敷として知られる岩室温泉。そのほぼ中心に店を構えるのが『灯りの食邸 KOKAJIYA』。築120年の古民家を改装したレストランで、シェフの熊倉 誠之助(くまくら せいのすけ)氏が腕を振う。
熊倉氏は、沖縄でバーテンダーとしてキャリアをスタート。日本バーテンダー協会主催のカクテルコンペティションで数々の入賞(2006年内閣総理大臣杯 全国泡盛カクテルコンペティション 第2位他)を果たす。料理は独学で学び、故郷新潟へ。ケータリングシェフを経て、2013年『灯りの食邸 KOKAJIYA』をオープン。2022年には、レストランの並びに『一棟貸切りの宿 岩室久元』を開業し、活躍の場を広げる。
店名にあるKOKAJIYAは、本家の温泉旅館が元々鍛冶屋だったことに由来する。国の登録有形文化財に登録されているレストランは、料理も器もその趣のある佇まいと同じく“温故知新”がテーマ。「裏に山があり、山を越えれば海があり、平野(田んぼ)も広がる」という土地の利をいかし、地元の食材をほぼ100%使用しながら、厳しい冬の気候から生まれた発酵、乾物といった郷土文化もふんだんに取り入れる。
11月〜2月の狩猟解禁時は、狩猟免許を持つ熊倉氏が休耕中の田んぼでカモやキジなどを撃つ。東京では寝かせるのが一般的だが、朝獲れたフレッシュなカモが味わえるのも『灯りの食邸 KOKAJIYA』ならでは。カモづくしのコースはリピートの多い人気メニュー。稲わらで一羽丸ごと藁焼きするカモは、メインの「カモのロースト」をはじめ、コンソメ他さまざまな部位を使用した料理を愉しめる。
手打ちのショートパスタは、近くの農家が作る石臼挽きの小麦粉を使用。例えばアワビとシイタケなどの旬の食材を使った濃厚ソースに絡め、香り高く仕上げる。また、コーヒーの苦味と相性の良い「ふきのとうのティラミス」他、熊倉氏のバーテンダー経験から得意とするドルチェも評判が高い。
ドリンクメニューも地元にこだわり、「カーブドッチ」「カンティーナ・ジーオセット」「ドメーヌ・ショオ」「ルサンクワイナリー」「フェルミエ」といった新潟のワイナリーの白・赤・ロゼ・オレンジワインを揃え、「カーブドッチ」ではオリジナルブレンドのワインを作ってもらっている。日本酒も新潟の「阿部酒造」「笹祝酒造」などのものを置き、ぬる燗以外はワイングラスで提供。クセがなく飲みやすいクラフトビール「スワンレイクビール」も好評だ。
120年前の歴史を肌で感じ、タイムスリップしたかのように落ち着くレトランは、4名席が2テーブルある2部屋が用意され、オリジナルの器や古物などを展示販売するスペースも設けられる。時間がゆったりと流れる空間で新潟の「歴史」と「食」を愉しんでいただきたい。
■アクセス
越後線岩室駅よりタクシーで10分