日本を代表する鮨の名店である『鮨さいとう』。今回は、第1回で登場いただいた同店の個室を担当する沼尾りゅうすけ氏に続き、齋藤氏にその腕を認められ、2024年の春ごろからメインカウンターのランチを担当する若手鮨職人の石川寛氏をインタビュー。共に『鮨さいとう』を支えている沼尾氏にもお話を伺い、二人が思い描くこれからのビジョンも語っていただいた。
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~極みを目指す次世代の料理人~
一流の料理人として走り出した若手にフォーカスし、すでに話題になりつつあるその才能をいち早く体験いただくとともにその成長と躍進を応援する醍醐味をぜひお楽しみください。次世代を担う若手料理人たちのそれぞれの思いを紹介するインタビュー記事をお届けします。
日本を代表する鮨の名店である『鮨さいとう』。今回は、第1回で登場いただいた同店の個室を担当する沼尾りゅうすけ氏に続き、齋藤氏にその腕を認められ、2024年の春ごろからメインカウンターのランチを担当する若手鮨職人の石川寛氏をインタビュー。共に『鮨さいとう』を支えている沼尾氏にもお話を伺い、二人が思い描くこれからのビジョンも語っていただいた。
目次
1. 仕込みや握りよりも“掃除”に重きを置く、一流店の教え
2. 自分の顧客を持っていたことで掴んだ、店に立つチャンス
3. これからの鮨屋に必要な、「会いに来てもらえる」関係構築

仕込みや握りよりも“掃除”に重きを置く、一流店の教え
― 石川さんは、どのような経緯で鮨職人を志したのでしょうか?
石川氏 19歳まで地元の愛媛県で建設の仕事をしていたのですが、昔から東京で働くことに憧れがあったので、21歳のときに、とりあえず上京しました。その当時、飲食に興味があったわけではなかったのですが、手始めに居酒屋でアルバイトをしました。ちょうどそのころ、いわゆる「鮨ブーム」が始まっていて、鮨業界は景気がよさそうな印象だったので、インターネットで「日本一の鮨屋」と調べてヒットした『鮨さいとう』に電話をしたんです。そこから運よく電話がつながり、当時の2番手だった俊治さん(現『鮨しゅんじ』の店主・橋場俊治氏)に面接していただきました。
面接では「何ができるの?」と聞かれたので、「何もできませんが、言われたことは素直に行動に移せます」と答えた記憶があります。その言葉に興味を持っていただいて、1~2週間後には働かせていただくことになりました。
― 『鮨さいとう』で、どのようにキャリアを積んでこられたのか教えてください。
石川氏 一番初めはひたすら掃除でしたね。親方は、魚を仕込めるとか、鮨が握れるとかよりも、掃除ができることに重きを置かれていて、「無理に営業するよりも店の中をきれいにしてほしい」と、良くおっしゃっていました。お店に入った瞬間に魚の匂いがしてしまうと一流店ではないともおっしゃっていて、きれいにする習慣は、最終的にはカウンターに立ったときにも所作としてあらわれるので、とても重要だということを学びました。
あとは、そもそも包丁が握れなかったので、最初は休み時間にネギの打ち方から練習したり、まかないを作らせてもらったりしていました。からあげ、ハンバーグ、カレー、オムライス、ナポリタンなどですね。その際に、自分で作ったまかないを親方や俊治さんに食べていただくのですが、あるとき、みそ汁がぬるいことがあって、親方にすごく怒られたことを覚えています。「身内においしくないものを出して、人様においしいものが出せるわけないだろ」と。確かにそうだなと思いました。この経験があったからこそ、お客様にはよりおいしいものを提供しようというホスピタリティーの意識が芽生えました。
― 仕込みが一通りできるようになるまで、どのぐらいかかったのですか?
石川氏 まだまだ勉強中のところもありますが、まったくの素人からのスタートだったので3~4年ぐらいですね。これに関しては人によると思います。仕込みは、その当時からりゅうすけがなんでもできていたので、いまでも彼に教わっています。シャリの切り方も、もちろん親方のやり方がベースですが、いまはりゅうすけと二人で試行錯誤しながらやっています。
握りは、夜中練習していました。鮨を握ること自体は、2週間ぐらいあれば多くの人ができるようになると思います。ただやはり重要なのは、先ほどお伝えした掃除ですね。掃除ができないと、魚の処理や匂いに意識が向かないので、握りにもブレがでると思います。
自分の顧客を持っていたことで掴んだ、店に立つチャンス
― この春から本格的にメインカウンターのランチを担当されますが、どのようなきっかけがあったのですか?
石川氏 実は25歳のころから3年弱、別の鮨屋に転職していて、そのうちの一年ぐらい大将をやらせてもらっていました。そこから、やはり親方の元で働きたいと思い、戻らせていただきました。ここで握らせてもらうきっかけは、親方がこれまで昼と夜どちらも店に立っていたところを、昼の営業を少しずつ減らしていたタイミングがあったんです。その際に「親方が空いているときに、握らせてもらえないですか?」とお願いしました。親方からは「お前、お客さん持っているのか?」と聞かれ、たまたま前の店でかわいがってもらっていたお客様がいたこともあり、自分でお客様を連れてくるという条件で、店に立たせていただくことになりました。
― 今回、石川さんがアメリカン・エキスプレスの会員様向けに提供されるランチコースは、握りのみのおまかせコースですが、握りで心掛けていることはありますか?
石川氏 親方が築き上げてきた『鮨さいとう』のイメージを崩さないように、またまだ親方の握りには程遠いですが、所作も含めきれいに握っていきたいと思います。お客様に関しても、普段はネットの予約は受けておらず、自分たちでLINEやSNSでつながっているお客様に来ていただいているなか、信頼のおけるアメックスさんのお客様に来ていただくことはとても楽しみです。良い緊張感をもって仕事ができるのかなと思います。

石川寛氏のランチコースは、握り15貫、巻物1品、お椀で、22,000円(税込)
これからの鮨屋に必要な、「会いに来てもらえる」関係構築
― 現在“ダブル2番手”ともいえるお二人ですが、どのような関係性なのかを教えてください。
石川氏 お互い同い年で今年30歳になりますが、23歳のころから一緒に修業していました。ここで働き始めたのは僕のほうが少し先ですが、職人歴はりゅうすけのほうが長いです。一緒に働くようになって、気が合ったのですぐに仲良くなりました。
― お互いリスペクトしあっているところはありますか?
石川氏 いまは、りゅうすけが『鮨さいとう』の仕込み長のポジションにいますが、とにかく仕事ができることを一番リスペクトしています。あとは、オンとオフがしっかりしている。親方もそうなんですよね。僕が一度退職したあとも、りゅうすけとは連絡を取り合っていて、彼が転職先の鮨屋に食べてきてくれたり、毎週のように遊んでくれたりしていました。そこから月日が経って、お互い店に立っているのが感慨深いです。
沼尾氏 僕の場合は兄貴(石川氏)の人間性ですね。兄貴と出会うまでは、後輩にはやさしく接しますが、同い年や先輩には少し歯向かっていたタイプで、そのあたりがお互い似ているのですが、同い年で初めて仲良くなったのが兄貴でした。

熱量の高い会話を繰り広げる同い年の二人。石川寛氏(写真左)と沼尾りゅうすけ氏(写真右)
― お二人が鮨職人として、大切にしている考え方があれば教えてください。
沼尾氏 お客様に喜んでいただくことですね。『鮨さいとう』は、静かに食べていただくというよりも、お客様とコミュニケーションを取りながら楽しんでいただくスタイルでやっています。親方のお客様も親方に会いに来ている方がほとんどなので、僕たちもある意味アイドルのような存在になって、僕らに会いに来てもらうという関係性をつくっていきたいです。
石川氏 僕も、鮨やつまみがおいしいのは大前提で、元気になって帰っていただくことを意識しています。鮨やつまみはどの店もおいしいので、これから鮨業界で残っていくためには、僕らに会いに来ていただけるお客様がいることが必要だと思います。
― 以前、りゅうすけさんにお話を伺ったときに、今後は若手の育成に力を入れていきたいとおっしゃっていましたが、これからお二人が『鮨さいとう』で取り組んでいきたいことがあれば教えてください。
沼尾氏 いまも若手を育成していきたいという思いは変わらないですね。ここで働く人はみんな独立願望がありますが、親方からは「独立するなら、自分と同じレベルで仕事ができる職人を2人つくってから」とも言われています。俊治さんのように親方のほうから独立の許可が出る場合もありますし、とりあえずいまは目の前のことを全力でやりたいです。
石川氏 若手の育成にもつながる話ですが、親方は『鮨さいとう』は「夢を見させてくれる現場だ」とずっとおっしゃっています。僕らは親方を尊敬して働いているなかで、まず僕らが先頭に立って活躍していくことで、「鮨さいとうグループにいればこれだけ豊かになれる」ということを示していきたいです。

編集後記
いまの鮨業界を俯瞰して見ると、一流であり続ける店の本質的な部分が、今回のインタビューに詰まっていました。名店には優秀な2番手がいて、その2番手が憧れる存在である親方の考え方や在り方が大きな影響を与えている。「掃除ができていないと握りもブレる」という石川さんの言葉から、親方の教えを自分自身が行動に移すだけではなく、後輩にもしっかりと受け継いでいるという、熱い思い感じ取ることができました。齋藤さんの“両腕”となる二人の今後の活躍が楽しみになるインタビューでした。
【取材・文】 白石直久
次世代を担う若手料理人とそれぞれの想いをアメリカン・エキスプレスは応援しています。
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