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『鮨さいとう』期待の2番手。「スタッフの絆を大切にし、人を育てられる鮨職人を志す」


Next Star Chef
~極みを目指す次世代の料理人~

新たな食の世界を広げるプログラム「Next Star Chef」。一流の料理人として走り出した若手にフォーカスし、すでに話題になりつつあるその才能をいち早く体験いただくとともにその成長と躍進を応援する醍醐味をぜひお楽しみください。次世代を担う若手料理人たちのそれぞれの思いを紹介するインタビュー記事をお届けします。


『鮨さいとう』沼尾りゅうすけ氏

鮨好きであれば、その名を知らない人はいないほど、高い人気と実力を誇る名店『鮨さいとう』。「さいとう出身」と聞けば、多くの食通が注目を集め、実際に予約困難店への階段を駆け上がる店も輩出している。 そんな同店が、次世代を担う鮨職人の育成の場として設け、しっかりとした修業を積まないと立つことができないと言われているのが「鮨さいとう個室」だ。今回、この個室のカウンター席を、2023年1月から担当している沼尾りゅうすけ(ぬまお りゅうすけ)氏に、今の意気込みや今後の目標などについて伺った。

目次


1. お客さんと話せる仕事を理想とし、鮨職人の道へ進む

2. 転職した『鮨さいとう』で、自身の経験が実る

3. 握りの味の変化をもたらした唯一のアドバイス

4. スキルの底上げをし、スタッフ育成でも世界一を目指す

お客さんと話せる仕事を理想とし、鮨職人の道へ進む

― 料理人のなかでも鮨職人を志した、いきさつを教えてください。

実家が和食店を経営しているので、その影響もあり昔から料理人になろうと考えていました。鮨職人になろうと思ったのは、お客さんと会話をしながら仕事がしたかったからです。今はカウンター割烹などが増えていますが、昔の和食店は、裏の厨房で料理を作って出すイメージが強かったので、鮨屋であれば、それができると思ったんです。

― 鮨職人になるうえで、修業先はどのように選ばれたのですか?

たまたま高校の先輩が有名な老舗の鮨店で働いていたので、紹介してもらいました。初めに研修のようなものを受けて無事合格したのですが、料理をするのではなく、元気の良さやコミュニケーション能力を見られていて、部活みたいな感じでしたね。

― 老舗の鮨店では、どのように経験を積んでいったのでしょうか?

最初の2年間は魚を触らせてもらえず、米や皿を洗ったり、ガリをつくったり、系列店のホテルの宴会のセットをするといった感じです。3年目で、ようやくコハダやアジの仕込みを少しだけやらせてもらえるようになりました。そこから、5年目でホテルの宴会で握りができるようになり、そこで数をこなして、6年目でカウンターに立つことができました。

転職した『鮨さいとう』で、自身の経験が実る

― 『鮨さいとう』に転職したきっかけは何ですか?

20代前半で、他の店も経験してみたいと思っていました。『鮨さいとう』は世界一の鮨屋と言われることもありますし、憧れの店でした。そんな中、実家の和食店でお世話になっている器屋さんの社長に紹介してもらいました。

― 『鮨さいとう』に入ってからは、すぐに仕込みなどを担当されたのですか?

全然そんなことはなく、最初の1~2年ぐらいは、ホールがメインで、できても魚の頭を落とすぐらいでした。ただ、仕込みなどは自信があったので、チャンスがきたらいつでもいけると思っていました。

― 修業を重ねるなか、齋藤さんからの教えで印象に残っていることはありますか?

『鮨さいとう』のスタッフは、みんな親方の言葉が刺さったことで、働き続けている人が多いと思います。「本当の男は、何か言われてもぐっとこらえろ。余計なことを言うな」といつもおっしゃっています。僕は一度、お店を辞めようと思ったことがあったのですが、そのときに「とりあえず継続だ」「このまま辞めても、どこ行っても同じよ。同じことを繰り返す。お前はもったいない」と引き止められたことがあり、とてもうれしかったことを覚えています。

― 現在は個室を担当されていますが、いつ転機が訪れたのですか?

毎年、京都で鮨のケータリングをやっているのですが、かなりの数の鮨を握るので、親方から「誰か握れるやつはいないか」と言われ、これはチャンスだと思って手を挙げました。実際に鮨を握ってみると、親方からは「おぉ、お前できるじゃねえか、いいね!」と言われて、そこからかもしれないですね。

お店で握れるようになったのは入社して4年目ぐらいからです。当時個室を担当していた俊治さん(『鮨しゅんじ』の店主・橋場俊治氏)が休みだった日曜日に握っていました。初めは親方のお客さんや、以前働いていた鮨店のお客さんも来ていただいて、少しずつリピーターの方も増えていきました。これを3年ほど続けて、今年(2023年)の1月から本格的に個室を担当しています。

握りの味の変化をもたらした唯一のアドバイス

― 『鮨さいとう』スタイルの“3手の握り”は、齋藤さんから直々に教わったのですか?

一度も教わったことはないです。親方からは、「俺はお前に教えねえからな、基本的に見て覚えろ」と言われていました。駆け出しのときからそんな感じだったので、それがあたりまえですね。

一般的な握りは形を整えるために、ネタ(鮨ダネ)の上から指で少し押さえるのですが、3手の握りだと、この上から押さえる動作がなく、最後に握り手の横からの圧力だけで形を整えるのですが、これを習得するのに苦労しました。

― 古き良き時代の職人という感じですね。握りの所作も齋藤さんに似ています。

所作はすごく大事にしています。握りに関して、親方から一言だけアドバイスをいただいたことがあって、シャリ玉(丸く形を整えた鮨飯)を作るときに「しっかり握れよ」と教わりました。初めは意味が分からなかったのですが、一般的には柔らかめに作ることが多いシャリ玉を、思っていたよりも硬めに作るようにしたら、お客さんからも「前よりも味が良くなった」と言っていただけました。

盛り皿に置いた瞬間から、ゆっくりと沈んでいく鮨。
マグロだけでなく、白身魚の鮨ダネであっても鮨飯との一体感があるのが特徴。

スキルの底上げをし、スタッフ育成でも世界一を目指す

― これからのご活躍が楽しみです。今後、目標にしていることはありますか?

若いころは30歳までに独立しようと考えていましたが、現段階では、すぐに独立することはないと思います。まずは親方のために、若いスタッフの育成に力を入れていきたいです。実際に、人を育てられる人間にならなければ、独立しても人がついてこないですし、ちゃんと自分の分身を作ってから独立したいです。

僕は、『鮨さいとう』は名実ともに世界一の鮨屋だと思っていて、僕らがもっと腕を磨いて、親方のように実力のある鮨職人になることができれば、親方は人を育てることでも世界一になると思います。僕が独立しても固い絆でつながっている、そんな「鮨さいとうグループ」を築いていきたいです。

― 最後に、これから料理人を目指している方に向けて、アドバイスがあればお聞かせください。

料理人は、「気持ち」の部分が大切だと思います。仕事をする中で、ちょっとした理不尽があってもぐっと我慢する。これが親方の教えです。あとは、信頼できる人の元で働くこと。そして、人と人とのつながりを大切にすることが、この飲食業界で生きていく上で、一番重要なことだと思います。

編集後記

昨今では有名店出身の若手の鮨職人が、早期に独立することも少なくないですが、沼尾さんは、まずは若手の育成に力を入れたいという志が高い方でした。お話を伺う中で、親方へのリスペクトやスタッフ間の絆があることで、「我慢すること」も良い修業の一つとなり、その積み重ねが一流の鮨職人へと成長させていくのだと感じました。もちろん、その『鮨さいとう』での修業は、見て覚えることが中心ですが、最近では沼尾さんが握り方を教えたり、仕込みでは齋藤さんも教えていたりと、多様な考えや状況に配慮したスタッフ育成を行っているそうです。これらからの鮨さいとうグループの成長がとても楽しみになるインタビューでした。

取材・文 白石直久
撮影 M.ishii

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