おいしさを追求する、料理を極められる料理人
― 篠原さんの中で、お弟子さんへの調理指導のような方針はありますか?
篠原氏 それはないですね。料理に関しては、最終的な仕上がりはこのようにしてね、とは伝えますが、それまでのアプローチは人それぞれです。私は、個性をつぶしたくないので、それぞれの個性を持ちながら料理が作れるようになってほしいんです。ただ、私はこのようにやっているよ、と考える姿を見せることが指導だと思っています。
― 『銀座しのはら』から独立されている方は何人かいらっしゃいますが、独立できる人の特徴はありますか?
篠原氏 自分が作らなければいけないと思う料理を、まっすぐお皿の上で表現できる人ですね。ちょっと流行りを追いかけてみたり、誰かの真似をしてみたりする料理人は、初めはいいかもしれませんが、そればかりだと、大成はしないと思います。自分はこういう料理がやってみたいということを突き詰めることができる人は大成すると思います。
― 篠原さんから見て、今後の澤田さんに期待しているところはありますか?
篠原氏 カウンター割烹で大阪を代表するような店をつくって欲しいです。彼は料理オタクなんですよね。私はいつも思うのですが、オタクでないと料理は極められないと思います。そういうところは尊敬しています。私の弟子の中でも、そういった気質の人はなかなかいなくて、その気質に期待しています。
― 澤田さん自身は、料理をつくることに対して、どのような考えをお持ちですか?
澤田氏 人と同じというのがあまり好きではなく、一つの料理に対して、もう少し手を加えたらおいしくなるのではないか、ということを考えるのは好きですね。その点に関しては、おやっさんから学んだことが多いです。日々、料理の微調整をする方だったので、同じ料理を作るときも「今日はこうしてみようか」とか。飲食店では、決まったやり方が多いと思いますが、おやっさんの場合はそれがなくて、いい意味で型がないです。
見た目にしても、食材の取り合わせにしても、よそにはない料理が特徴なので、ぱっと見、奇抜に見える料理でも、「田舎料理」というテーマがあり、すべて軸がある。そういう料理を作っている人にいままで出会ったことがなかったので、発想もそうですし、ブレないところが勉強になります。