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話題の新店『澤田』店主インタビュー。『銀座しのはら』の料理観と、古典や創作の技術も会得し、和食を極め続ける料理人


Next Star Chef
~極みを目指す次世代の料理人~

一流の料理人として走り出した若手にフォーカスし、すでに話題になりつつあるその才能をいち早く体験いただくとともにその成長と躍進を応援する醍醐味をぜひお楽しみください。次世代を担う若手料理人たちのそれぞれの思いを紹介するインタビュー記事をお届けします。

Next Star Chefで応援している『澤田』が2024年有名グルメガイドで1つ星を獲得されました。


『澤田』澤田敏允氏

近年、様々なジャンルで修業を積んだ料理人が独立した店が増えてきているなか、2023年7月、大阪にオープンした割烹料理店『澤田』が話題だ。創作性のある『島之内 一陽』、独自性のある『しのはら』、老舗の『味吉兆』と、幅広く和食を極めるための修業先を選択し、独立後は夫婦二人三脚で差別化した店づくりを行う。今回は、店主・澤田敏允(さわだ としみつ)氏に、これまでのキャリア形成から独立に至るまでの話を伺うだけでなく、澤田氏が修業時代に一番影響を受けたという『銀座しのはら』の店主・篠原武将(しのはら たけまさ)氏にもインタビュー。澤田氏の料理人としての魅力に迫る。

目次


1. スポーツジムのインストラクターから料理人へ転身

2. 『銀座しのはら』の立ち上げを支えた、頼れる右腕

3. おいしさを追究する、料理を極められる料理人

4. 独立に有利な環境にとどまらず、老舗店でも腕を磨く

5. “誠実な料理”を心掛け、夫婦で営む割烹料理店を開店

スポーツジムのインストラクターから料理人へ転身

― 澤田さんは、スポーツジムのインストラクターから料理人へ転身されるという、異色のキャリアをお持ちなんですね。

澤田氏 高校の時まで、ずっとサッカーをしていて、かつ焼鳥店でアルバイトもしていたこともあり、将来はスポーツ関係か飲食かどちらかを仕事にしたいと考えていました。そこで、まずはスポーツの専門学校に通って、卒業後はスポーツジムのインストラクターとして23歳まで働いていました。実際には、インストラクター以外にも、自分が興味のある仕事をいくつか試みたのですが、最終的には飲食店で働きたいと思うようになったんです。

― 修業先は、どのような視点で選ばれたのですか?

澤田氏 本当は焼鳥が好きだったので焼鳥店で働いて独立しようと考えていました。ただその前に、大阪でも有名な『島之内 一陽』で、しっかりと調理技術を学んだ上で、焼鳥店を出店しようと思ったんです。当時は、焼鳥店が今ほどのステータスが高いものではなかったので、どうせやるなら日本でも有名な新しい形の焼鳥店をつくりたいなと思い、修業をスタートしました。

― その次の修業先が『しのはら』(滋賀)ですが、どのようなきっかけで働くことになったのでしょうか?

澤田氏 『一陽』で修業しているときに、やりたいことが変わってきました。焼鳥店は出したいと思っていましたが、もっと和食を極めたいと考えるようになり、懐石料理に興味を持つようになりました。当時の大阪は、懐石料理のお店は少なく、『吉兆』や『柏屋』などはありましたが、どうせなら自分がまだ知らない店で働きたいと思い、いろいろ探してたどり着いたのが『しのはら』でした。実際に食べに行かせてもらって、そこで食べたすっぽんのお椀が感動するぐらいおいしくて、このすっぽんの料理を学ぶためだけでも働く価値はあると思いました。食事をしながら、おやっさん(篠原武将さん)と話しをさせてもらい、その場で働きたい旨をお伝えして、その翌週に『しのはら』での修業がスタートしました。

『銀座しのはら』の立ち上げを支えた、頼れる右腕

― 篠原さんから見た、当時の澤田さんの印象を教えてください。

篠原氏 とにかく仕事が丁寧ですね。人付き合いでもなんでも。私はどちらかというと無頓着だったので、よくそこまで丁寧な仕事ができるなと思いました。人柄ですよね。なんでも丁寧で、カウンター商売向きの性格ですね。

― 澤田さんは、滋賀から銀座の移転の際に、お店を支えていた方と伺っています。

篠原氏 本当にあのとき澤田がいなかったら、今の『銀座しのはら』は存在しないですね。当時は、今現在、大分の別府で独立している子と3人で店を回していて、僕の仕事を知ってくれていたのが澤田だったので。

― お店を一から立ち上げることは、お弟子さんにとっても良い経験ですね。

篠原氏 そうですね。澤田は段取りを組んで合理的に物事を考えるタイプですが、実際の現場では、料理だけでなく、予約の対応も並行してやる必要があるので、どれだけ段取りを組んでも思い通りにいかないことがあります。そういった意味では、いい経験をさせたなと思います。

おいしさを追求する、料理を極められる料理人

― 篠原さんの中で、お弟子さんへの調理指導のような方針はありますか?

篠原氏 それはないですね。料理に関しては、最終的な仕上がりはこのようにしてね、とは伝えますが、それまでのアプローチは人それぞれです。私は、個性をつぶしたくないので、それぞれの個性を持ちながら料理が作れるようになってほしいんです。ただ、私はこのようにやっているよ、と考える姿を見せることが指導だと思っています。

― 『銀座しのはら』から独立されている方は何人かいらっしゃいますが、独立できる人の特徴はありますか?

篠原氏 自分が作らなければいけないと思う料理を、まっすぐお皿の上で表現できる人ですね。ちょっと流行りを追いかけてみたり、誰かの真似をしてみたりする料理人は、初めはいいかもしれませんが、そればかりだと、大成はしないと思います。自分はこういう料理がやってみたいということを突き詰めることができる人は大成すると思います。

― 篠原さんから見て、今後の澤田さんに期待しているところはありますか?

篠原氏 カウンター割烹で大阪を代表するような店をつくって欲しいです。彼は料理オタクなんですよね。私はいつも思うのですが、オタクでないと料理は極められないと思います。そういうところは尊敬しています。私の弟子の中でも、そういった気質の人はなかなかいなくて、その気質に期待しています。

― 澤田さん自身は、料理をつくることに対して、どのような考えをお持ちですか?

澤田氏 人と同じというのがあまり好きではなく、一つの料理に対して、もう少し手を加えたらおいしくなるのではないか、ということを考えるのは好きですね。その点に関しては、おやっさんから学んだことが多いです。日々、料理の微調整をする方だったので、同じ料理を作るときも「今日はこうしてみようか」とか。飲食店では、決まったやり方が多いと思いますが、おやっさんの場合はそれがなくて、いい意味で型がないです。

見た目にしても、食材の取り合わせにしても、よそにはない料理が特徴なので、ぱっと見、奇抜に見える料理でも、「田舎料理」というテーマがあり、すべて軸がある。そういう料理を作っている人にいままで出会ったことがなかったので、発想もそうですし、ブレないところが勉強になります。

独立に有利な環境にとどまらず、老舗店でも腕を磨く

― 『銀座しのはら』で腕を磨いたら、その後は独立という印象がありますが、澤田さんは『味吉兆』でも、さらに修業を重ねていらっしゃいますね。

澤田氏 『銀座しのはら』に務めていたら独立するときに安泰だろうという考えは浮かびましたが、もう一つ掘り下げた古典の和食を独立前に学びたかったんです。『味吉兆』は歴史もありますので、昔ながらの仕事をしていて、そういうものを勉強することで、自分の中にある和食の軸を、もう一回り太くしようと思いました。


そのあとは、独立しようと思って辞めたのですが、ちょうどコロナと重なって、独立を延期したタイミングで、知り合いがやっている『食堂たのし』で料理長を募集していたので、1年間の契約で働くことにしました。そこは、日本酒やワインに詳しい店主が、味わったことのないペアリングをする店で、そこでもすごくいい刺激をいただきました。料理長としてやらせてもらっていたので、自分が考える料理を出すことができたのも、よい経験でした。

“誠実な料理”を心掛け、夫婦で営む割烹料理店を開店

― 2023年7月にオープンした割烹料理店、『澤田』のコンセプトを教えてください。

澤田氏 「お客様に対して誠実な料理」を出していきたいと考えています。お客様の体になじむようにコースの構成を工夫して、日々の気候や湿度に合わせた味つけを調整する、こまやかな仕事が目指すところかなと思います。

7月に明石を代表する魚とも言われるサバの棒寿司。身が筋肉質でかつ脂ものっているのが特徴で、それにあったシャリを一から試行錯誤して完成させた一品。コースの2品目におしのぎとして提供し、ゲストが心地よくお酒を飲めるような配慮も。

― 誠実というと、ベーシックな日本料理という印象がありますが、これまでのキャリアを生かして、その中にも個性を出していくのでしょうか?

澤田氏 和食店に行くと、どこにいってもこの時期はこの料理がでるなというイメージがあると思いますが、それはそれでよいと思います。古典も大切にしながら、新しいことにもチャレンジする料理を提供していきたいと思います。

コースの中盤で提供している八寸(2023年7月撮影)。茶懐石の侘び寂びを意識し、余白をつくりながら盛りつけたのは、トウモロコシのすり流し、鱧の卵の塩辛、炊いて燻製にしたカキ、酢〆にしたコハダ。7月の季節の飾り葉で緑一色にし、新緑を表現している。

― 最後に、今後の展望をお聞かせください。

澤田氏 お店は妻と、もう一人の調理スタッフの三人で営業していますが、料理だけでなく、誠実さを感じられるおもてなしも心掛けていきたいです。これから大阪を代表するお店になれるように、日々精進していきます。

修業先の同僚である女将の澤田由美(さわだ ゆみ)氏、調理主任の日髙誠之(ひだか まさゆき)氏と共と力を合わせ、チームワークがありテンポの良い接客も同店の魅力の一つ。

澤田氏が茶道のおもてなしの心を大切にしていることから、店内は茶室をイメージしたデザインに。6席のカウンターには、ヒノキの一枚板を使用。

編集後記

澤田さんのお話を聞きながら、戦略的な修業先の選択にどんどん興味が湧いただけでなく、本当に和食を極めたい方なんだなと感じました。話す際の丁寧な言葉選びや料理に対する探究心が伝わってくる人柄が、まだまだ著名な和食店が少ない大阪エリアでも、すぐに人気を集めるのではないかという期待感が高まりました。まさに、篠原さんが話されていた、独立して大成する人の特徴に当てはまっている方で、独立後もどんどん成長していくタイプという印象を受けました。これからどのような店づくりをしていくのか、とても楽しみです。

【取材・文】 白石直久

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