池川氏の“焼鳥道”を世界に広める「鳥しきICHIMON」
― 2023年1月に設立した「鳥しきICHIMON」は、どのような経緯で立ち上がったのでしょうか?
池川氏 私は34歳で自分の店を持ちましたが、当時の焼鳥店はまだまだ居酒屋の延長線上で、料理屋としてのレベルまで成熟していないと感じていました。そんな中、海外のイベントで焼鳥を出す機会があり、このデジタルの世の中で、炭で鶏肉を焼くというアナログで原始的な手法や所作、鶏肉を細かい部位に分けて焼き分ける繊細な仕事を、海外の方から、「なんでお前たちそんなことができるんだ!」と、すごくリスペクトされた経験があり、そこで焼鳥の価値に気づいたんです。
その経験から、焼鳥というものがまだまだ世の中に伝わっていないと感じたことと、焼鳥職人の社会的地位が低いイメージもあったので、そこを変えていきたいと思いました。そして、日本の食文化である焼鳥というものをどんどん発信していくために、一人でやるよりは私の焼鳥に対する思いに賛同できるメンバーで発信していき、焼鳥職人の社会的地位を上げながら、焼鳥を通してみんなが幸せになるために結成したのが「鳥しきICHIMON」です。
私は、焼鳥職人はシェフや料理人とは少し違って、“焼鳥道”というか、武道みたいに答えがないと思っています。例えば、シェフはスープを舐めて味のチェックができますが、焼鳥は焼いたものをお客様にそのまま出すわけなので、その状態を五感で感じながら提供する必要があります。そこには技術だけじゃなくて、ものの考え方を含め、自分が成長しないといい焼きができないと思います。そこで、いい焼鳥を焼くためのものの考え方を“焼鳥道”と捉えて、その道場を世界中に広めていき、さらに各地の道場で地元の方も学べる仕組みをつくることで、地元の方から焼鳥を発信してもらうことが私の最終的なゴールです。