京都・東山駅から徒歩15分、京都のアイコンのひとつである八坂神社をのぞむ高台寺。その緑に包まれた清閑な地に店を構える、京都を代表する老舗料亭『菊乃井本店(きくのいほんてん)』。料理店としての創業は大正元年(1912)で、もともとはさらに歴史をさかのぼり、豊臣秀吉の妻・北政所が茶の湯に用いた名水「菊水の井」を代々守ってきた家柄に端を発する。近隣の下河原通にはその名の由来となった「菊水の井」があり、『菊乃井』の料理はすべてこの水を用いる。
『菊乃井』の象徴でもある水は、だしが良く出る軟水で、中でも『菊乃井本店』が汲み上げる「菊水の井」は最も格の高い井の水として知られる。京料理の食材と火のあいだには必ず水が介在する。煮る・蒸す・茹でるという水を多く使う調理法のみならず、茶道(茶の湯)が発達したのも京都の水抜きでは語れない。それらを総合して成立する京料理は水を用いた総合芸術でもある。日本文化の象徴ともいえる「水」を店名に掲げる『菊乃井本店』の料理が「水の料理」とも呼ばれるゆえんだ。世界的グルメガイドブックでは連続して三つ星を獲得している。
三代目主人の村田吉弘(むらた よしひろ)氏は、『菊乃井本店』ほか京都木屋町と東京の3店舗を統括し、また日本を代表する和食料理人としてテレビや雑誌等にも出演、国内外で知られた存在だ。「日本料理アカデミー」創設や和食のユネスコ無形文化遺産登録など、和食を世界に広めるために心血を注ぎ、2018年には文化功労者に選ばれた。2020年には「第8回アジアのベストレストラン50」の一環として、外食産業に多大な貢献をした料理人を讃える「アメリカン・エキスプレス・アイコン賞」を受賞した。
料理は「美しくて浮花(ふか)ならず、渋くして枯淡(こたん)ならず」。上品で美しく、また力強さをかねそなえる「きれい寂び」を身上とし、京都ならではの大らかさをたたえる。器は先代から伝えられた桃山時代の織部をはじめ数十点にものぼる北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん)をはじめとした多様な器が、季節の情感を盛り込む料理を引き立てる。室内に飾られた円山応挙(まるやま おうきょ)や伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)の軸、魯山人や三代目・澤村陶哉(さわむら とうさい)の花入なども見どころだ。日本酒・ワインともにあらゆる地方のものを取り揃え、特に日本酒では一般的に入手困難な福井県・黒龍酒造「石田屋」「二左衛門」、新潟県・大洋酒造「鄙願(ひがん)」などを置く。
江戸末期に建てられた数寄屋建築の建物は全室個室で11室、2~50名様のゲストに対応。すべての部屋から京都らしい庭園をのぞむことができる。ゲストの特別な日を心ゆくまで楽しめるよう心を砕く一期一会のもてなしは、人生の節目やお祝い事に、また親しい方との会食に、京都の美食を味わいたい方に心強い味方となるだろう。海外ゲストのためには、英語の献立を用意している。お子様は10歳以上のお子様のみ、お子様用メニューも対応(要事前相談)。京都の、また日本文化の真髄を料理のみならずしつらえなども含め総合的に味わえる店として、是非その世界観を楽しんでいただきたい。
※世界的グルメガイド京都・大阪 2024年度版にて三つ星を獲得
■アクセス
阪急京都本線 京都河原町駅より徒歩15分