「middle」には日本と異国の間(あわい)を漂う魅力がある。京都市営地下鉄烏丸線・北大路駅から徒歩6分。鴨川沿いの二階建の家屋がレストランとは、いかにも理想の京都のイメージだ。初めてなのに懐かしい蔵を思わせる一軒家は、イタリア領事館として建てられたもので、2階に上がるといま通ってきた北大路橋の往来が見渡せ、鴨川の流れが心を癒す。
シェフ藤尾 康浩(ふじお・やすひろ)氏は15歳から英国に留学、パリでの学生時代にフランス料理に触れた。在仏中は『パッサージュ・サンコントワ』(パリ)にて研修、『ミラズール』(南フランス)にて勤務、帰国後は『Restaurant La Cime(ラ・シーム)』(大阪)の副料理長として腕を磨いた。日本国内の若手料理人のコンテスト「RED U-35」では2016年に最終選考の「ゴールドエッグ」に選ばれ、若手料理人の才能を発掘する世界大会「第3回サンペレグリノヤングシェフ2018」で日本人で初めて優勝の快挙を成し遂げた。
料理はフランス料理を基調にしながら、「和・洋・イノベーティブ」とでもいうべき繊細なバランスを保つ。和・洋の濃度はゲストの居住地などでも変わる。ほぼフランス料理であるもの、またフランス料理の盛り付けで味は和の要素を持つもの。日本全土がふるさとという感覚で日本食材を用いる。綾部市・蓮ヶ峯農場の軍鶏、伊勢や明石のマナガツオやタチウオ。土地柄、賀茂茄子や聖護院大根などの京野菜の出番も多い。食後にはフロマージュの用意がある。
ドリンクはフランスワインを中心に、フランス8割、イタリア2割、ナチュールもクラシックもあり、料理に合わせられるように、常時数種類ずつのグラスワインを準備している。日本酒ではドン・ペリニヨンを率いた醸造家リシャール・ジョフロワ氏が製作した「IWA」などを常備、またノンアルコールでも、自家製の梅ジュースや紅茶のコンブチャなど、料理に合わせて準備されている。
イタリア領事館だった建物の内装は純和風でありながら、漆喰をイタリアの技法で磨くなど、随所に洋の要素を入れ「海外から見た日本らしさ」の体現を目指す。食器のうち約半分はアンティークで、欧州の18~19世紀くらいのものも。かつてパーティールームだった広いダイニングには4名卓、2名卓、8名卓がそれぞれ1つずつ。パーティションを立てて、半個室のようにすることが可能だ。天気が良ければ、テーブルを広いテラスに移動することもできる。デートや記念日、親しい方との会食、そして藤尾氏の料理そのものを旅の目的に訪れてみるのはいかがだろうか。
■アクセス
地下鉄烏丸線北大路駅3番出口、北大路バスターミナルより徒歩6分