「富山湾」。海底谷に立山連峰から栄養分たっぷりな水が流れ、魚がふくよかに育つことから、〝天然のいけす〟とも言われている。その富山湾に面した港町・魚津の駅前に『鮨 大門(すし だいもん)』を構えるのが大門 太郎(だいもん たろう)氏である。富山の海の幸に囲まれて育った大門氏の幼い頃からの夢は鮨店の大将になることだった。高校時代から鮨店でアルバイトを始め、和食店での仕事も経験し、22歳で北海道の小樽へ。飛び込みで入った老舗鮨店で4年間修業し、その後は札幌『すし善』で腕を磨く。地元を離れている間に地元と鮨への想いが強まり、「富山にあってこそ意味のある鮨店を作りたい」と一念発起。帰郷して2012年に『鮨 大門』をオープン。念願かなって大門大将の誕生となった。そして2016年には、世界的グルメガイドで一つ星を獲得するほどの実力店に成長した。
魚はサワラやアマダイ、ノドグロ、シロエビなど魚津の漁港で水揚げされたばかりの新鮮なものをふんだんに使用。マグロやウニなど修業時代に出合った高級食材は、築地や北海道から仕入れている。「富山湾のものでほとんど揃うが、築地もたまには行っておかないと」と、日本各地の旬の味に目を向けることも忘れない。つまみから握りまで、選りすぐりの魚たちのうま味を最大限に引き出せるように、労を惜しまずひと手間も二手間もかけて提供する。酢飯は、1年寝かせた魚津産コシヒカリの古米。同じ魚津の気候で育った魚たちと相性よく、赤酢3種と塩と砂糖で仕上げる。醤油やみりん、日本酒に焼昆布とかつお節を合わせた煮切りも、鮨との絶妙なコンビネーションを堪能でき、『鮨 大門』の評価を上げる一仕事だ。日本酒も富山の地酒、「林」「勝駒」「北洋酒蔵」などが揃う。
店内はカウンター7席、お座敷が8席ある。カウンターはヒノキの一枚板。席には、使いやすさを追求して特注した吉野杉の箸をそろえ、ゲストを出迎える。カップルでゆったりと、家族でなごやかに、あらゆるシチュエーションに応えてくれる『鮨 大門』。「自分の鮨を食べたいと思って、わざわざ来てもらえることを目指している」と目を輝かせる大将渾身の握りを味わえば、また必ずここに帰ってきたくなるはずである。
■アクセス
JR北陸本線(富山〜直江津) 「魚津駅」より徒歩1分